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渋谷に突如現れし自殺志願者を目の当たりにした日の出来事

4月22日(土)明け方のこと。

花金でフィーバーした後、今住んでいる池尻大橋の付近にタクシーから降りた時のことだった。

目の前で若き女性が蹌踉めき、道路に倒れる瞬間を私の目は捉えた。良くも悪くも正義感が強い自分の性格上、見て見ぬ振りをすることはできない。下心があると思われるかもしれないが、周りの人の目も若干ながら気にしながらも助けることに。

 

思いの外明け方にもかかわらず車がよく通る。正直、その場に寝ていたらきっと惹かれてしまい、最悪の場合死んでしまう。おまけに明け方の冷え込む東京の気温。わずか10度強であったと記憶している。地面から伝わる冷たさは、日本社会を想起させてしまう。ここには心の温かさを失ってしまったのだろうか。

 

いざ女性を助けようとするにもどうしてよいのかわからなかったが、一旦道路の脇に移動させることにする。女性は倒れた時に膝を打っていたようだ。

 

「痛い・・・寒い・・・」とか弱い声を漏らしながら、悶えていた。

iPhoneや財布などを持って去られてもおかしくない状況で、人間はいかに弱い生き物かと感じてしまった。

変な感情を持つこともなく私は「風邪をひくから家に帰りましょう。家はどちらですか?」と聞いてみた。

そこからの会話は下記の通りだ。

女「家はこのあたりだけど、離して。帰れるから」

私「酔いつぶれてるから帰るにも帰れないでしょ。家に送ってあげるから場所を教えて」

女「怖い。男はみんな危険だから怖い。ほっといて」

私「大丈夫、下心ないから。おまけに普通の日本人とは違うよ」

女「外国人?」

私「海外長いから帰国子女みたいなもの」

女「(私の顔をようやく見上げて)タイプの男じゃない」

私「(イラっとしながらも)さぁ、家に行きましょう。立ってください」

あくまで海外帰りの紳士を装い、苛立つ感情を抑えた。

酔っ払いの対応は意外と大変であることを感じた。

逆に迷惑をかけていることもあるから、困った時はお互い様だし、恩返しならぬ恩送りが大事であると心得ている。

その後、とうとうこの見知らぬ女性が恐ろしいことを口にし始めた。

女「死にたい。あぁ、死にたい。」

私「そうか。そんな時期もあるからね」

至って冷静に対応。変なやつだ、まったく。

女「このままここで死にたい」

私「死ぬのはあなたの勝手だけど、少なくも自分が放置したせいであなたが死んだ、なんてことなると私は罪の意識を感じてしまう。だからこの場で死んでもらいたくない。かつぐからいきましょう」

世の中いろんな人がいる。東京は日本の中心地だけに、危険な思想を持った人たちの母数は多いのかもしれない。

トボトボとよろめくような足取りで歩く女性。家は思いの外近かった。

駅から徒歩2分程度のため、立地条件は悪くない。

それなりにお金を持っているに違いない。そこそこの生活水準を保っている人がどうして死にたいなんて口にするんだろうか。幸福の国のはずが不幸な人間を生み出しているのかもしれない。

そして、アパートの玄関の前に到着。

セキュリティーがしっかりしているのか、玄関の時点で鍵が必要となる。

ここでおさらばしてもよかったのだが、鍵がなかなか鍵穴に入らない。

そこで下記会話が繰り広げられた。

私「手がぶれて穴に刺さらないから手伝ってあげるよ。」

女「さして・・・」

私「もちろん、鍵を渡して」

女「違う。刺して。鍵じゃなくてナイフで刺して」

私「は?なんで?」

女「刺せないの?ナイフで私を刺し殺すこともできないの?」

私「あなたをこの場で殺すことはできるけど、あなたのために犯罪を犯して人生を捨てたくないね」

何をこの女性は病んでいるんだろう。

結局自力で鍵を開け、這うようにして1階にある自分の部屋に入っていった。

その姿を見届けて私は帰路につく。

助けてあげたのに、なんだよあいつ。という感情が沸き立ったのは正直なところある。

自分の精神が摩耗してしまうくらいなら最初から助けなくても良かったのだろう。

しかし、日本社会が生み出した不幸な人間がいるのは事実なのだろう。

いや、日本社会に限らず、希薄な人間関係や会社組織なども要因かもしれないが、「死にたい」と思えないくらい楽しい人生を送れるようにしたいものだ。

他人事ではなくあくまで当事者意識を持ってね。

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